面談で何を聞かれる? 融資審査で押さえておくべき必須ポイント ~独立のきっかけ編~
これまで数回にわたって、日本政策金融公庫での融資面談における最頻出の質問について書いてきました。
おさらいをしておきますと、融資面談でよく聞かれる項目は、『職務経歴書』『サロンのセールスポイント』、そして『リスク管理』についてです。
しかし最近、同行させてもらう面談を見てみると、開業の動機や目的について深く聞かれるケースが増えているように感じます。
今回は、開業の動機・目的を伝えるときのポイントをご説明します。
シンプルだが意外に難しい“開業の動機”
開業の動機ですから、質問自体は単純なものです。しかし開業の動機を伝えることは、難易度としては高いと思います。
「なぜ開業しようと思ったのですか?」
単純なだけに、明確にしておかなければまともに答えることができません。
たとえば次の回答を見てください。
「開業は美容師になったときから考えていて、10年たったのでそろそろだと思って開業を決めました」
「自己資金をコツコツためていて、300万円たまったので開業をしようと思いました」
この回答では、実際に質問に答えたことになりません。
重ねて「なぜ10年たったら開業しようと思ったのか」「なぜ300万円なのか」など質問されることが想定されます。何も考えていないと、言葉に詰まってしまいそうです。
考えていたとしても自分の考えを整理していないと、相手にうまく伝わらず次々に質問がくるはめになります。
開業の動機は人それぞれですが、ポイントは以下の3点です。
① 自分が美容師として独立できる技術・接客を身につけた。
② キャリアの中で、自分がやりたいことが見つかった。
③ 開業を考えるきっかけがあった。
これを具体的にしてつなげていくことが大切です。
自分の実績を伝える
職務経歴書で具体的なキャリアの内容は質問されますが、ここでも「自分が開業に値するキャリアを積んできた」ことを意識して話す必要があります。
「美容師として15年、ずっとこのエリアで働いてきました。その中で固定客も600人を超え、売上も毎月150万円まで伸ばすことができ、美容師としての自信がつきました」
さらに、もしマネジメント経験があればそれも入れましょう。
「直近の5年は店長としてサロンマネジメントに携わり、経営のノウハウを学んできました」
独立できる実績や経験を積んだという前提から、具体的に自分のやりたいことに結び付けるのが肝です。
日本政策金融公庫の融資面談では、同業種でのキャリアが重視されます。それゆえ、“開業にあたり自分にはその資格がある”ということをアピールすることが大切なのです。
自分のやりたいことを伝える
自分の実績をアピールし、開業への自信がついたことを伝えたら、自分の技術や接客を開業してどう生かすのかを語らなければいけません。
実績だけをアピールしてしまうと、「そんなに今のサロンで素晴らしい結果を出しているのなら、サロンに残ったほうがよいのでは」と融資担当者に思われてしまうからです。
・お客さま一人ひとりに丁寧に接客したい
・夫婦でゆったり時間を過ごしたい
・自分のカット技術を広め、地域でNo.1のサロンを作りたい
・自分のオリジナル商材を拡販したい
・一緒に働く仲間により良い環境を提供したい
いくつか例を挙げてみましたが、開業して達成したいことは人それぞれです。自分の夢をしっかりと融資担当者に伝えましょう。
ただし、「開業してやりたいこと」は担当者が突っ込みやすい質問です。「なぜそれをやりたいと思ったのか」まで考えておく必要があります。
これまでのキャリアでどんなことに関心を持ってきたか、あるいは何を課題と感じているかを整理しておきましょう。
結局は、自分の経験の中からでしか「開業してやりたいこと」は見つかりません。
開業のきっかけを伝える
もう一つ忘れてはいけないのが、「なぜこのタイミングなのか」です。
あるサロンオーナーはキャリアが十分だったために、「もう少し早めに開業できたのでは」と突っ込まれました。
この方の場合は、「数年前から開業は考えていましたが、物件が見つかりませんでした。ようやく理想の物件が見つかったため今回融資を申し込みました」と答えました。
それ以外にも、「結婚して引っ越しすることになった」「会社の体制が変わるタイミングで開業しようと思った」など、開業のきっかけも人それぞれです。
なぜ開業を決意するに至ったのかもしっかり伝えましょう。
まとめ:自分の思いを言語化できるかどうか
開業の動機を簡潔に伝えるには、3つのポイントをまとめましょう。
① 美容師として実績を積んで独立の自信を持てた。
② キャリアの中で自分の達成したい目標ややりたいことが明確になった。
③ きっかけがあって開業を決意した。
もちろん、開業の動機に正解・不正解はありません。担当者は純粋に、「なぜ開業したいのか」を聞きたいのです。
ここでのキーワードは“言語化”です。開業への想いを相手に伝えるには、頭にあるイメージを言葉にする必要があります。
面談前に「自分がやりたいこと」を、誰かに話したり計画書に書いたりすることで、明確にしておくといいでしょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。