後悔しないサロンづくりのために!内装工事業社を選ぶときの注意点
美容室の開業で最も大きな費用は店舗内装です。単なるサロンのデザインだけではなく、電気・ガス・水道といった美容室としてのインフラにもお金がかかります。
開業者からは「できるだけ内装費をかけないで作る方法を教えてほしい」という相談を受けることがあります。
これまでの経験上、スケルトンの状態からサロンを作ると坪単価40万円くらいにはなります。
たまに「知り合いの業者に頼むと低価格でやってもらえる」という人もいます。
内装費は額が大きいので、できるだけ抑えたいという気持ちはわかります。知り合いに頼むことそれ自体も悪いことではありません。
しかし、私たちが懸念しているのは「金融機関からお金を借りて、自分の人生をかけて作るサロンを、知り合いだから、安いからという理由だけ決めて大丈夫ですか」ということです。
今回は、内装工事業者を選ぶときの注意点についてお話します。
「開業はプロジェクト」だと理解しているか?
以前記事にも書きましたが、開業というのは一つのプロジェクトです。
サロンオーナーが中心となって、様々なビジネスパートナーを募り、理想のサロンを作っていきます。
プロジェクトですから、積極的にオーナーが参加しないとよいサロンはできあがりません。
つまりお金を出せば、業者が勝手にサロンを作ってくれるわけではないということです。
開業に関わるサービスについては、「Aのお店ではコーヒーが100円で売っている。Bのお店では90円で売っている。だからB店で買おう」という発想で会社を選んではいけないのです。
コストだけで選ぶ人はこうした思考に陥らないように注意してください。
内装デザイナー、施工業者と一緒にサロンを作っていくという意識を持たないと、トラブルの元になります。
美容室を作った経験はあるのか?
美容室の店舗設計には美容室ならではの特徴があります。
一つはスペックです。美容室では電気・ガス・水道が営業の生命線になります。
電力によって、ドライヤーが何台同時に使えるのかが決まります。引き込み給水管の太さや、シャンプー台の数によってシャワーの威力が変わってきます。
もう一つは保健所の基準です。必要な施術面積、照明の明るさなど、基準を満たせない場合には営業許可が降りません。
こうした美容室の特徴を理解している業者を選ばなければ、カッコよい内装デザインができたとしても営業ができなくなってしまいます。
まずは、お願いしようとしてる内装工事業者の実績や事例をチェックしましょう。美容室を作ったことがない業者であれば、トラブルになる確率は高くなります。
どうしても実績や事例で判断できない場合には、いくつか電気やガスの容量などについて質問してみるのもよいと思います。
ビジネスとして進められるか?
いくら低価格で、知り合いに内装工事を依頼できたとしても、お金が発生する限りビジネスです。知り合い同士だと、そういった意識を忘れてしまいがちです。
以前、こんなケースがありました。あるオーナーが、友達の経営する内装工事業者に店舗デザインと施工を依頼しました。坪単価30万円以下と破格の条件で受けてくれたようです。
ところが、いつまで経っても施工スケジュールができあがってこない。連絡をしても折り返しが来るのに数日かかる。それでもオーナーは「安く引き受けてくれたことで、後回しにされているのかも」と不安に思いながらも、友達に遠慮してしばらく放置してしまいました。
結局、サロンの引き渡し日が大幅に遅れることが判明。一緒に働くスタッフはオープン日に合わせて別のサロンを辞めてもらったため、多大な迷惑をかけてしまいました。
返信が遅い、納期に遅れるなど、本来ビジネスではあってはならなことです。それは価格の問題ではありませんし、知り合いだからという言い訳にもなりません。
ビジネスパートナーとして信頼できるかどうかを、契約前に確認しておく必要があります。
担当者とのやり取りを通して「約束を守ってくれるか」「すぐ返事を返してくれるか」「隠しごとせず、事実を伝えてくれているか」などを探っていきましょう。
この人と一緒にサロンを作りたいと思うか?
開業というのは、オーナーにとって人生をかけたプロジェクトです。だからこそ、内装工事業者を選ぶ時にも、自分の夢のために一緒に働く仲間としてふさわしい会社なのかを考えます。
「一緒に働く仲間」について、どのようなイメージがわきますか。
コミュニケーション力の高い人、話をよく聞いてくれる人、的確にアドバイスをくれる人、背中を押してくれる人…色々と思い浮かぶと思います。
そうしたイメージに近い人物をビジネスパートナーに求めているはずです。
内装工事業者を決めるには、担当者とのやり取りを通して相性を確認することも大事です。ビジネスの基本だけでなく、担当者の熱意や提案内容も判断材料に入ってくるはずです。
パートナー選びはコストだけで見ない
内装会社を選ぶ前に、マインドセットから入りましょう。内装工事業者に任せにするのではなく、彼らと一緒にサロンを作っていくという意識に変えましょう。
そうした意識に立って、以下の3つの視点を判断基準として持ちましょう。
1.専門性 … 美容室の内装デザインを作った実績があるのか。美容室経営についての知識を持っているか。
2.ビジネス … 期日を守れる人か、すぐに返信してくれる人か。
3.相性 … 一緒にサロンを作っていきたいと思うか。
私は「絶対に知り合いの業者に頼らないほうがよい」とは言いません。
ただ、知り合いになると、こうした開業プロジェクトでの合理的な判断をしなくなる傾向があります。
知り合いであろうと、格安の内装工事業者であろうと、理想のサロンを作るのに一緒に働くパートナーであることには変わりません。
だからこそ、コスト以外の判断基準をしっかり持っておくべきなのです。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。