美容業界は非常識!? 業種の特徴から考えるサロン経営の課題と解決のヒント
日々さまざまなサロンオーナーの方たちと関わりがありますが、あるサロンオーナーから「美容室で働いていると、逆に美容業の特徴が見えにくい。他の業界と比べてどういう違いがありますか」という質問をいただきました。
このひと言は、私にとってもよい気づきになりました。
「美容室として当たり前と思っていることは、実は特殊なことかもしれない」「別の業界(製造業や小売業)との違いを知っておくのは、サロンを繁盛させるうえで大切なのでは」と感じたのです。
そこで今回は、美容業界の特徴について整理してみました。
目次
サービスを受けるまで価値がわからない
良し悪しを判断するタイミング
製造業や小売業では、価値が“商品”という形で消費者に提供されます。
消費者はその商品を見たり触ったりして購買を判断します。同じような商品を並べて比較検討することも可能です。
購入する前に入念に調べることで、良し悪しを判断できます。
対して美容室のサービスは、実際に受けるまで消費者は良し悪しの判断ができません。
スタイル写真や内装デザインに魅力を感じて来店する人もいますが、実際のサービスが価格相応なのかどうかを判断するには、サービス受けてみないとわからないのです。
集客のポイントはお客さまの期待値をあげること
受けてみなければわからないサービスの価値をどのように伝えていくかが、サロン集客のポイントといえます。
重要なのは、ターゲットとコンセプトです。
「誰にどんな価値を提供できるか」を考え抜いて、お客さまの期待に沿ったプライシングを行いましょう。
※関連記事『まずはターゲット設定! “来てほしいお客様”から考える価格戦略の立て方』
もうひとつは、実際にサービスを受けた人による紹介や口コミの活用です。
特にサービス業においては、お客さまの体験談には大きな価値があります。
「サービスの価値は受けてみないとわからない」という視点に立ち、地道にファンを増やしていくことを怠らないようにしましょう。
施術者と消費者が同じ時間を共有する
時間の制約があるサービス業
製造業や小売業であれば、商品を提供するのに必ずしも消費者に会う必要はありません。今はインターネットでも商品を購入できます。
また、製造業や小売業は作った商品を在庫として残しておくことができるため、今日お客さまが来なくても明日買ってくれるチャンスが残っています。
一方、美容業はどうでしょうか。
サービスを提供するためには、お客さまが来店する(もしくは施術者が訪問する)ことが必要になります。つまり時間が制約されるのです。
空席を埋めなければ売上は上がらない
美容室は、映画館や航空券と同様、その時間を逃したらその席を売ることができません。そのため、できるだけ席をお客さまに開放して予約を促す努力が欠かせません。
ホットペッパービューティーをはじめとしたネット予約が集客効果を発揮できるのは、施術者と消費者の時間のマッチングを成立させているからです。
もしホットペッパーには掲載したくない、というのであれば、他の方法でお客さまに空席を知らせる必要があります。
※関連記事『見逃せない空席への貢献度! ネット予約から考えるポータルサイト活用法』
同じサービスでも施術者によってクオリティが違う
施術者によってサービスの質がバラつく原因
製造業・小売業で商品を販売する場合、機械を使って同じ品質のものを生産できます。そして誰が売っても同じ商品を提供できます。
一方、美容室のサービスは施術者一人ひとりが、お客さまにその場で提供するものです。キャリアや技術の差によって質の違いが生まれます。
スタッフによるサービスレベルの差を減らすためには、教育が欠かせません。
しかし、人材不足であるうえ、昔ながらの技術指導では人がついてこないなど、教育面での課題はたくさんあります。
これは、即戦力を採用しても同じです。技術レベルが高くても、サロンの施術プロセスや重視すべきポイントを統一させることは難しいのです。
サロンコンセプトの共有やマニュアル化など、さまざまな手法を使って乗り切らなければいけません。
本業に集中できる環境づくりが重要
美容業における売上高の人件費率は40~50%にものぼります。スタッフは売上を伸ばすことに集中してもらい、できるだけ雑務を減らす努力も欠かせません。
たとえば、「レセプションを置く代わりにネット予約にする」「タオルの洗濯をレンタルサービスに切り替える」また、「日々の売上や経費の管理を自動化する」などITやアウトソーシングを活用しましょう。
本業のために周辺業務を効率化するのも有効な打ち手になります。
※関連記事『マクロな視点からコンセプトづくり!人口減少から考える美容室開業のヒント』
まとめ:美容室の特徴を理解して対策を練る
今回挙げた美容室の特徴は、美容師にとっては当たり前のことだと思います。一方で、この特徴が美容室経営の難しさを表しているとも思います。
1)サービスは無形であり、新規客へアピールすることが難しい。
2)施術者と消費者が同じ時間・同じ場所にいる必要があるため、都合が合わないと機会損失が起こりやすい。
3)サービスのクオリティはスタッフによって異なるため、それを統一させるには相当な労力がかかる。
こうした課題をどうやって解決するか。これが美容室経営者が日々考え、取り組んでいることなのです。
開業を目指す人は、事業計画書作成の段階から考えていきましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。