自己資金ゼロでは融資は通らない!担当者が「この開業は失敗する」と判断する理由
「自己資金がゼロでも開業ができるか」という質問を受けることがあります。
以前コラムにも書きましたが「自己資金なしでも開業できた人はいるようですがおすすめしません」と伝えています。
実際に自己資金ゼロで開業した人は、親族がお金を出してくれた、支援者が出資してくれたなど、自分以外の人の金銭的サポートでお店を作っています。
そういう支援がない人は、銀行からの融資に頼らざるを得ません。しかし、自己資金がゼロでは融資は通りません。
自己資金ゼロの人にお金を融通しないのは、融資担当者が「その人は開業に失敗する」と判断するからです。
※参照
『理想のサロンが遠のく!? “自己資金ゼロ”での開業がおすすめできないワケ』
ハイリスクな案件と捉えられる
自己資金がゼロということは、開業にかかるすべての費用を借入金で支払うということです。
自己資金がある人でも同様に借入れにはリスクが伴います。つまり返済ができなくなるリスクです。
しかしこのリスクに関しては、据置期間などを設けることで返済期間を延長したり、一時的に止めたりすることができます。
自己資金ゼロの場合には、返済のリスクとは別の問題がでてきます。
つまり開業者自身の生活の問題です。自己資金がゼロであるということは、オープン時には自分のお金を生活費に充てられないのです。
オープンして売上が立った時点から、自分の家の家賃を支払ったり、公共料金を支払ったりします。つまりサロンの経費と同時に、自分の生活費が出ていくのです。
いわゆる自転車操業でスタートすることになるのです。
こうした状況では、少しでも売上が立たない時期が続いたら、まず生活が苦しくなります。
せめて自分の家族からの支援があれば、サロンの業績が悪くても、どうにか生活はできるかもしれません。
しかし自己資金ゼロの人は、親族からの支援もアテにできないケースがほとんどです。
融資担当者は、返済ができなくなるリスクに加えて、開業者が生活できなくなるリスクがあると判断するため、融資を行わないのです。
開業の熱意が足りないと思われる
開業をするときに、自己資金だけでは足りないとわかっている人は、融資の条件を調べます。
我々の開業相談やセミナーに参加したり、商工会議所に行ったり、本を読んだり、情報を集めていく中で「融資には自己資金が必要である」ということがわかります。
それにもかかわらず自己資金を貯めてこなかったということは、融資担当者からすれば準備不足です。「思いつきで開業しているのでは」と思われます。
自己資金を増やすのは、日々の積み重ねです。1年くらいでは貯まりません。自己資金とは、実は、開業者の熱意を示すバロメーターでもあります。
どうしても開業をしたいと思うならばコツコツと積み立てる、もしくは、生活費を抑えるなど努力をします。
開業サポートさせていただいたお客さまの中には、美容師になったときから15年積み立てて、開業のために自己資金700万円を貯めた方がいました。
ここまで極端にならなくてもよいと思いますが、自己資金は熱意に比例するのです。
融資担当者も自己資金額をサロン安定の材料としか見ているわけではなく、本気度を見ているのです。
本気で取り組める人でなければ当然事業は失敗するからです。
せっかく開業に向けて、技術や接客を磨き、多くの指名客を獲得してきたのにもかかわらず、自己資金が貯められなかったことで「開業への熱意がない」と思われてしまうのは非常にもったいないことです。
※参照
『いくらあれば開業できる? 必要な自己資金に関する悩みを解決します!』
経営者としての資質がないと思われる
実績もあって、店長も経験をしている。それなのにお金がない。こうしたケースでは、開業者の財務管理能力が低いのではないかと思われます。
財務管理能力は、経営者に必要な能力の一つです。
稼ぐ力はあるけれどお金が増えないのであれば、どれだけ売上を伸ばせても営業利益がでない、財務状況が改善しないということになりかねません。
融資担当者は、自己資金ゼロの人を「サロンを経営してもお金を貯められない人」であると判断します。
もちろん自己資金が貯められないことにも様々な理由があります。
美容室の給与自体も低いですし、家庭の事情などで支出が大きいため、なかなか積み立てる余裕がないなど、どれも理解できます。
しかし、融資審査はそうした事情を汲んで判断することはありません。
銀行がお金を貸すのは、単に頑張っている人を応援したいからではなく、貸すことによって利息という収入を得るためです。
融資もビジネスなのです。こうした側面があることも忘れてはいけません。
※参考
『自分本位になっていない?相手のメリットを意識した事業計画書で融資を獲得!』
自己資金を用意するには周りの協力が不可欠
実際に開業サポートをさせていただくオーナーの自己資金は平均で200万円くらいです。そこに親族から100万円の支援金を得て300万円を用意します。
300万円あれば、おおよそ1000万円を借入することができます。つまり、なにも1000万円を貯める必要ないということです。
開業するためにはいくら自己資金が必要か、どうすればお金を貯められるのかを考え、できることから始めましょう。
自己資金をゼロから貯めていくには、生活費を切り詰めたり、働く場所を変えたり、フリーランスになったり、あるいは配偶者にも働いてもらったり、様々な工夫と努力が必要になります。
そこで重要になってくるのが、周囲の協力です。まずは親族の協力を得ましょう。
金銭的な支援だけでなく、自分がお金を貯めるまでの間当面の生活費を一部出してもらうとか、長く働いて収入を増やす間、家族の面倒をみてもらうとか、色々なサポートの形があると思います。
自分の夢のためには、身近な人たちからの理解を得ることが大切なのです。協力者がいるということは、融資担当者からすると非常に心強いのです。
少しずつ積み立てが増えていけば自信にも繋がります。
自己資金がまだ十分に用意できないならば、まずは積み立てることから一歩ずつ始めてみましょう。
※参照
『【美容室開業のリアル】2019年開業サロンの自己資金と借入金データ』
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。