開業準備がスムーズな人はやっている。物件選定のプロセスと考え方
何度かコラムに書いていますが、開業で一番時間がかかるのは「物件選定」です。
なかなか理想の物件が見つからないし、逆に複数でてきて迷ってしまうということもあります。下手をすると1年以上物件を探しているケースも見受けられます。
一方、開業サポートをしていると、開業準備がスムーズに進む人がいます。彼らは物件選定のプロセスがスムーズです。
もちろん、物件を見つけるのは、運の要素が強いのですが、彼らは物件選定のステップがしっかりしていると感じます。そしてある程度、柔軟に妥協点を見出すのがうまいです。
必ずしも、この通りにやればすぐに物件がみつかるわけではありませんが、参考になるので今日はそのあたりの話をしてみます。
目次
出店エリアは絞りすぎない
開業相談を受けていると、どのエリアで出店したいかはある程度決めている人は多いです。
現勤務先サロンから近い場所で開業する場合
当然、働いているエリアなので、自分の指名客の来店が見込めるし、エリアの特性を理解しているため集客がしやすい。
開業して早めに軌道に乗せることができるのは、やはり働いているサロンから近い場所での出店です。
競業避止義務に十分に注意しながら、同エリアで出店を決めることが多いです。
地元に戻る、あるいは新天地で出店する場合
こういうケースは、ほとんど見込み客がゼロの状態です。出店エリアの市場調査(人口の多さ、競合の多さなど)もしっかり行うことになります。
エリアの選定で注意すべきは、エリアを絞ってしまうと物件が見つからない可能性があるという点です。
物件がスムーズに見つかる人は、出店エリアの範囲を広げたり、候補地を複数考えておく傾向にあるようです。
現勤務先から近くに開業する場合には、起点になる駅を基準に沿線で何駅まで離れていいのかを決めておきます。
地元へのUターン開業、Iターン開業の場合は、沿線ではなく、エリアを複数候補として持つことがあります。
見込み客がない分、より人口が多く、チャンスがあるエリアを探しておくという発想です。沿線という考え方だと、隣駅は人口が減ってしまうと新規客の可能性が狭まってしまいます。
「出店エリアはあまり狭めすぎない」というのは大きなポイントです。
駅からの距離にはこだわる
エリアが決まったら駅あるいは、地方だと中心部からの距離を考えます。
駅から近い場所がよい理由としては、以下があげられます。
- 駅を使って移動する顧客を想定している。
- 駅から近ければ、多少勤務先サロンから離れていても、指名客が通いやすい。
- 駅周辺は人が集まりやすい。
一方、駅から遠くてもよいと考える場合はどうでしょう。
- サロンのコンセプトをベースに、ごみごみした場所を避けたい。
- その駅の周辺に住んでいる顧客が多い。
- 駅周辺以外にも、集客しやすい環境がある。(学校がある。マンションが多いなど)
特に地方の開業の場合は、顧客が車で移動することを想定すると、駐車場もポイントになるので、駅近くは避けたほうがいいという判断になることもあります。
スムーズに開業準備が進む人は、このあたりまではしっかり決めていることが多いと感じます。不動産屋に依頼するときも「駅からの距離」を優先して探してもらいます。
建物の基準は柔軟に対応
エリアを絞って立地をある程度決めると、次に建物に関する基準を考えます。
例えば、路面店にするかどうかです。
路面店にこだわる人は、顧客に見つけてもらいやすい、顧客が入りやすいという集客メリットを考える場合と、階段やエレベーターを使いにくい顧客を想定している(例えばベビーカーを引いてくる主婦・高齢者)場合があります。
一方、2階以上で探している人は、できるだけ家賃を安く抑えたいという費用面の理由か、あえて路面店に出さないという選択をします。
この辺りはあまりこだわらないほうが、物件選びが格段に速くなります。
出店エリアが大事なのであって、路面店かそうじゃないかまではこの時点では重視しない。路面店でてきたらラッキーと思っている人も少なからずいます。
また、人通りの多い大通りで出店することにこだわる人もいます。
集客を考えて「交通量が多い」「バス停がある」「夜も人が歩いている」という要素を重視します。
逆に、裏道にこだわる人などは隠れ家をコンセプトにしたり、顧客が自分が美容室に入るのを見られたくないという気持ちに配慮したり、それなりの理由があります。
しかしながら、ここまで細かく設定していくと該当物件がでてきません。理想の物件はほぼ出てこないものです。
したがって、スムーズに物件を決める人はこのフェーズで妥協できるように感じます。
例えば、駅からの距離と、路面店かどうかをどっちをとるかというと、駅からの距離を優先させるケースが多いと感じます。
A「出店エリアや駅からの近さは譲らないけど、路面店はあきらめて3階の物件に入る」
B「路面店にするために、駅近をあきらめて郊外で出店を決める」
私の経験上、Aのほうが圧倒的に多いです。(絶対ではないですが)
1.どのエリアで出店するか
2.出店候補の駅・市街地はどこか
3.駅からの距離はどうか
4.路面店かどうか、人通りが多いかどうか
この順で、優先を決めている人が多いように感じます。
物件の大きさと家賃は儲かるかを意識する
最終的な物件の決め手となるのは、理想の大きさと家賃になります。
家賃も大きさも基準に達していなければ、どんなに上記の条件がよくても見送ります。したがって、大きさと家賃は感覚で決めないことが大切です。
つまり、収支計画に見合った出店規模と家賃なのかをしっかり計算する必要があります。
まず「大きさ」は、スタートする人数、あるいは軌道に乗ったときの人数を考慮して決めます。
ずっと一人サロンなのに、20坪あってもスペースが無駄になります。
逆に3人でスタートするのに、シャンプー台は1台しか置けないのも不十分です。
ハコの大きさを決めることは、言い換えればサロンの売上を決めることでもあります。
建物が狭かったら「サロンの規模を小さくできるか」、あるいは広かったら「スタッフを集めることができるか」を考えなければなりません。
もう一つは「家賃」です。これは、規模を決めるうえでも最も大切なファクターです。
どんなに理想の物件を見つけても、儲からなければ意味がありません。つまり、収支計画にしたがって家賃は決定されなければなりません。
美容室のビジネスにおいて家賃こそが最大の固定費です。もちろん、人件費も大きな固定費になりますが、最悪削ることができます。
家賃は削れないという点では、一度決まったらこの固定費はずっと払い続けなければなりません。
そこで活用されるのが、損益分岐点になります。
損益分岐点の計算は、SALONスターターで繰り返しお伝えしておりますので割愛しますが、気になる方はこちらを読んでください。
「経費計算からスタート! 損益分岐点を使った売上目標の立て方」
家賃20万円の場合の損益分岐点は?30万円だったら?
物件が見つかったらまずは、自分が生活できるために必要な利益と売上を算出します。その売上が達成可能な数字であれば、先に進みます。
ここまでやって、ようやく現地調査を行い、内装費の見積もりを出すわけです。
損益分岐点を計算して、十分に利益を出せる建物であると判断できれば、多少内装費が予算より高くても、そこで出店するという意思決定をする人は多いです。
それだけ家賃は重要なのです。
一番やってはいけないのは、家賃相場を自分で決めてしまい、可能性をつぶすこと。
一人サロンで家賃を10万円以内に抑えたいと思って物件を探していて、よい立地で13万円の家賃の物件があったのに、あきらめてしまう人もいました。
しかし、実際に損益分岐点を計算した結果、13万円の家賃でも、80万円の売上を出せれば40万円の利益は獲得できそうだとわかりました。
彼は、自分で根拠もなしに10万円という上限を設定していたのです。
物件が見つかったら、まずは損益分岐点を計算してみることで家賃を正確に評価できるのです。
開業がスムーズな人は、このあたりの計算をしっかり行っています。
まとめ:物件選定がスムーズな人の特徴
物件選びに時間がかかっている人は、以下の特徴を参考にしてみてください。
- エリアは複数の候補地をもつ、一駅にこだわらない。
- 駅の近くにするか、離れてもいいかにはこだわる。
- 建物の条件については、物件が絞られてしまうので、場合によっては妥協する。
- 大きさ、家賃から損益分岐点を計算する。
もちろん、細部までこだわりたい人もいます。その考え方を否定するつもりもありません。
しかし、開業準備をどんどん進められる人は、柔軟さをもって合理的に判断ができる人だと思います。
物件探しに迷った場合にも、ビューティガレージがお手伝いいたします。ぜひ開業無料相談にお問い合わせください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。