開業美容室向け財務計画!資金調達からオープンまでのお金の流れ

公開日:2024/03/25  更新日:2024/03/25
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美容室 資金調達

今回は、貸借対照表の図を使って、資金調達からオープンまでのお金の流れ、財務状況を見ていきます。

貸借対照表とは、ある時点でのサロンのお金の動きを示す表のことです。貸借対照表は主に二つの部分から成り立っています。

 

一つは「資産」という部分で、サロンが持っているお金や物の価値のことです。もう一つは「負債と資本」という部分で、サロン(オーナー)が借りているお金やオーナーが出したお金のことを指します。

 

今回は、お金を借りてサロンがオープンするまでにお金がどう集まって、何に使われているかを「見える化」してみたいと思います。

 

貸借対照表の読み方

下記は、典型的な貸借対照表の図になります。

 

 

左右にブロックが積み上がっています。左側は「資産」つまりサロンのお金や物の価値を表します。右側は「負債と資本」つまりお金の出どころを表します。

 

基本的には右から左に読んでいきます。自分のお金(資本)と負債を使って、資産を手に入れるわけです。

 

では開業準備をはじめたとき、オーナーの貸借対照表はどうなっているでしょうか。

 

参考記事:『開業美容室オーナー必見!青色申告決算書の作成と経理の基本

 

事業計画書作成の段階

まだ開業準備を始めた段階の時は自分のお金しかありません。

 

例えば、自分が事業に投資できるお金が300万円だとすると、自己資金=資本が300万円です。そのお金はまだ預金通帳の中にありますから、左側の資産部分は預金300万円と表すことができます。

 

 

借入れをする段階

事業計画書を作り、物件が見つかったら、いよいよ融資になります。この段階では物件取得にかかるお金、内装工事の見積もり、美容器具や設備の見積もりを集めて、いくら借入が必要かを計算します。

 

今回は、1000万円を借入れることになりました。事業計画書をもって、いざ融資面談です。

 

さて無事に1000万円の融資が通りました。金融機関からオーナーの預金通帳に1000万円が振り込まれます。

 

すると貸借対照表はどうなるでしょうか。まず右側には借入金という負債が1000万円増えます。同時に、左側には預金として1000万円が追加され、自分のお金とあわせて1300万円になります。

 

 

参考記事:『美容室の開業で融資を受けるための手順についてのまとめ

 

お店を作る

1300万円を手に入れたので、いよいよお店作りに入ります。物件の契約、内装工事、そして美容器具や設備の購入をしてお店が完成します。

 

お金を払って、サロンを作ったわけです。この時点で貸借対照表はどのように動くでしょうか。

 

この段階では、預金(現金)の一部が、サロンという「固定資産」に変わります。

 

例えば、内装工事費が700万円、物件取得が60万円、美容器具100万円、その他設備に40万円かかったとしましょう。合計900万円かかりました。

 

すると、左側「資産」のカテゴリーでは、お店作りに使ったお金900万円が固定資産になります。一方、1300万円の預金は400万円に減りました。

 

 

参考記事:『美容室開業に必要な費用内訳と資金調達について

 

営業準備

お店が完成したら、営業の準備に入ります。オープンするまでに様々な出費が発生します。

 

システムの導入費や広告宣伝費、採用費に加え、セミナーなど受講費や交通費などお金がどんどん出ていきます。

 

しかし開業時期において発生するこれらの費用は「繰延資産」という資産に変わります。

 

普通は使ったお金は消えてしまうのですが、開業のように大きな費用が発生する場合には、そのお金を全部すぐに使ったことにはしないで、使ったお金の価値がなくなるまでの期間にわたって、徐々に使ったことにしていきます。

 

これを会計では「繰延資産」と呼んで、お金を使ったけどすぐにはなくならない特別な財産として扱います。

 

ということで開業準備にかかった様々な費用はいったん「繰延資産」にしてしまいます。

 

このケースでは、合計100万円を使いました。したがって、左側「資産」のカテゴリーには「繰延資産100万円」が登場します。

 

また、預金からお金を使ったので、預金は400万円から300万円に減りました。

 

 

参考記事:『お客様にはどう映る? サロンオープンまでに考えるべき営業準備のコツ

参考記事:『専門家から学ぶ税務・労務<第1回> 開業費用と確定申告の仕方

 

仕入れ

最後に、オープン前に材料を仕入れます。70万円でシャンプーやカラー剤、パーマ液を購入したほか、店販商品も揃えました。

 

左側「資産」のカテゴリーに、70万円分の「仕入在庫」という項目が登場しました。預金はのこり230万円になりました。

 

オープン時、サロンが持つ現金は230万円ということになります。オープン後、売上が立ち現金が入ってくるまで、この230万円でやりくりすることになります。

 

 

まとめ

貸借対照表を使って、一連のお金の流れとサロンの財務状況の変化を見てきました。

 

調達したお金を何にいくら使うかを把握することで、サロンにはどんな資産がいくら残るのかを確認することができます。

 

自己資金と借入金を使ってサロンを開業すると、預金(現金)/仕入在庫/固定資産(お店)/繰延資産(開業で使ったお金)に分かれます。

 

大事なのは、サロンを安定させるために利益を出し、預金(現金)を増やして、負債(借入金)を減らしていくことです。

 

この預金(現金)部分を増やしていくことが、失敗しないサロン経営のポイントであることはコラムで何度も書いています。

 

もちろん売上も利益も重要ですが、サロンの財務状況も意識しながら経営をしていきましょう。

 

参考記事:『安定の鍵はキャッシュと自己資金。財務状況から考える開業後のサロン運営

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

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ビューティガレージ コンシェルジュ室

日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。

15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。

事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。

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