美容室開業で知っておきたい労務知識~労働保険~

労災保険

社会保険制度は、健康保険・年金の「社会保険」と、雇用保険・労災保険の「労働保険」に分かれます。

 

社会保険が大切だという話を前回しましたが、個人事業主の場合、社会保険の加入は任意であるのに対し、労働保険に関しては加入を義務付けられています。

 

経営相談を受けていると、労働保険への加入を忘れている個人事業主がいらっしゃいます。社会保険と混同している人も多いのです。

 

雇用したら労災保険は必ず加入

労災保険は、働いている人がケガや病気で働けなくなった場合の手当です。勤務中、もしくは出勤中の事故・病気などに対応します。

 

一人でも雇用したら、無条件に入らなければなりません。スタッフがバイトやパートでも加入します。そして保険料は全額事業主が負担します。

 

しかしながら、他に比べて労災保険の保険料は安く設定されています。1年の支払給与の0.3% ※1です。スタッフ一人の年間給与が250万円だったとしたら、250万円×0.3%=7,500円です。

 

注意すべきは、事業主が全額負担で納めるため、社会保険と同様にスタッフの給与から差し引くことはできないということです。

 

労災保険に入る場合には、労働基準監督署に届出が必要です。社労士や労働保険事務組合※2に委託して手続きを進めることもできます。

 

また、労災の認定は労働基準監督署の判断に基づきます。労災申請を行い、労働基準監督署が支給するかしないかを決めます。

 

加入は強制ですが、手続きが面倒ではあります。社労士や労働保険事務組合を利用するのがスムーズです。

 

※1 労災保険料率
※2 労働保険事務組合について

 

雇用保険は条件を満たせば加入

スタッフが退職したときに生活を保証する失業手当が給付されます。また、出産・介護などで一時的に働けない状態になったときにもらえる休業手当も、雇用保険から支払われます。

 

雇用保険に加入してからの期間、または支払われている給与額によって、支給額が違ってくるのも特徴です。

 

雇用保険の適用条件は、

①31日以上雇用されることが見込まれること
②1週間の所定労働時間が20時間以上であること

です。※3

 

この条件に当てはまるスタッフを雇用する場合、雇用保険の手続きが必要になります。注意が必要なのは、何日働いているかは関係ないということです。1日6時間の週4日勤務でも、1日8時間の週3日勤務でも、②に該当します。

 

雇用保険は事業主とスタッフ双方が負担します。平成30年度の保険料は支払給与額の0.9%。※4

 

このうち、事業主が0.6%、スタッフが0.3%を負担します。

 

給与が250万円の場合、年間保険料は250万円×0.9%=22,500円。このうち、事業主が15,000円、スタッフが7,500円を負担することになります。毎月の給与から天引きすることができます。

 

雇用保険に加入するには、管轄のハローワークで手続きする必要があります。

 

※3 雇用保険の加入手続き
※4 雇用保険料率

 

雇用=助成金のチャンス

人材難のこの時代、スタッフの働く環境整備は不可欠です。個人事業主だからといって、サロンの利益だけに目が行ってしまうと、労働保険の加入を怠ったり、労災申請をうやむやにしたりしてしまいがちです。

 

社会保険の加入も合わせると、保険料の負担が大きいのは確かです。しかしその一方で、雇用をすることによって助成金が得られるチャンスも生まれます。

 

助成金は、基準を満たせば必ずもらえる返済不要の支援金です。行政も積極的に働き方改革を訴えていて、多様な助成金があります。制度を理解して、基準を満たせるよう労働環境を整えていきましょう。

 

労務に関する実務はプロに任せるべき

国家資格で最も賃金が安いと言われる美容師。練習時間も含めると1日10時間以上も働いているというのも珍しくない業界です。こうした悪しき慣例を打破するのは、これからお店を持つ若き開業者だと思っています。

 

社会保険制度はスタッフの生活を守るための保険であるということ。保険がそれぞれどんな役割をもっていて、どの程度サロンにとって負担になるのか、そういった部分はサロンオーナーとして理解しておくべきです。

 

しかし労災保険や雇用保険の手続き、助成金への申請手続きはどちらも複雑です。税務・労務の基礎知識を知っているからといってすべて自分で行う必要はありません。実務に関しては、専門家に任せるべきだと思います。

 

オーナー自身の負担を減らすだけでなく、社労士を雇っているとスタッフも安心します。

 

税務・労務をセットでサポートをしてくれる税理士事務所・社労士事務所に依頼してみてください。弊社でも、税理士の紹介や、税務・労務のセミナーを定期的に行っています。

 

雇用を考えているかたはぜひお問い合わせください。

 

●文/コンシェルジュ室:安斎

 

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