ポイントは待ち時間!開業を阻む3つ難所と乗り越え方
開業準備を始めて、実際オープンするまでにはいくつかのステップがあります。一つひとつタスクをクリアしながら、開業に向けて進めていくことになります。
『失敗しない美容室開業|開業の流れから費用や手続きまで徹底解説します!』
その中でも、多くの開業者を苦しめるステップが3つ存在します。私は勝手に「難所」と呼んでいます。
開業というゴールにたどり着くには避けては通れないステップでもあります。
そこでつまづくことで、オープン時期がずれてしまったり、振り出しに戻ったりすることになります。
今回は、開業に立ちはだかる3つの難所について解説します。
現地調査から融資審査に進むステップ
よさそうな物件が見つかったら、まずは現地調査を行い、「美容室が営業できる設備があるか」「予算内で内装デザインができるか」を確認します。
その物件で開業すると決めたら、融資審査に進みます。
融資審査には
①事業計画書
②提出書類(自己資金のわかる通帳、源泉徴収や美容師免許など)
③見積もり・内装レイアウト
が必要です。
物件が見つかる前から①と②は準備できていることが理想です。あとは③の見積もりと内装レイアウトを待ちます。
しかし③の見積もりは、各事業者へ依頼しなければ出してくれません。
美容器具の見積もりはディーラーやメーカーに依頼します。内装レイアウトと見積もりは、内装業者にお願いします。
当然ですが、現地調査を行ってもすぐにレイアウトや見積もりは上がってきません。
内装業者が電気やガスの容量を調査したり、レイアウトを敷いたり、価格の調整を行ったりするのに時間がかかるからです。
ちなみに、ビューティガレージの場合でも現地調査から見積もり・レイアウトができるまで約2週間はかかります。
どうしても融資審査に進む前に時間が空いてしまうわけです。
したがって、内装の見積もりとレイアウトができあがってから、①事業計画書と②提出資料の準備を始めたのでは、さらに融資審査に進むのが遅れます。
融資審査に進むのが遅くなると、資金調達が間に合わず物件を取られる可能性が出てきます。
調査結果と見積もり・レイアウトを待つ間にすべきことは、この物件で開業した場合のシミュレーションを事業計画書に当てはめることです。
初期に作った事業計画書にリアルな数字を入れていく作業を行いましょう。
また、融資に必要な提出書類が集まっていないのならば、この期間を利用して準備しましょう。
実家にしまってある美容師免許を取り寄せる。源泉徴収票など手元にないなら、会社から再発行してもらう、など、見積もりがあがったらすぐ融資審査に行ける状態を作っておきましょう。
また、内装業者とも連絡を取り合い、見積もり・レイアウトの提出を早めてもらえるようにお願いしましょう。
『物件はここを見よう! 美容室開業のための物件調査レポート』
物件申込みから物件契約のタイミング
融資審査を受けて、結果を待っている間、不動産業者は早く契約手続きを進めたいところです。したがって、特に人気の物件の場合、物件担当者から催促の連絡が来ます。
物件契約は
申込み → 保証会社による審査 → 契約
の流れが一般的です。
したがって、まずは申込みをしないと前に進めません。しかし申込みをして審査が通ると、速やかな契約を求められます。
申込み段階であっても、契約予定日や入居予定日を入力しなければなりません。
融資を受けているので、少なくとも1ヶ月は余裕をもって契約したいところですが、不動産側はできるだけ早く契約をしたいと思っています。
一方で資金が入手できないと契約できないのも事実。したがって、不動産側との調整が必要になります。
自己資金だけでまず契約してしまうという選択もありますが、まだ融資が決まっていないためリスクは高くなります。もし融資が通らなかった場合、物件の解約にもお金がかかります。
かといって、融資が決まるまで申込みをしないと、別の人が申込みをして、物件を取られる可能性がでてきます。
物件申込みから物件契約に進むまでのプロセスが、開業準備で一番もどかしい時期なのです。
開業者は、自分でコントロールできない中で決断を迫られます。
銀行には早く融資を決めてほしいし、不動産屋には融資が決まるまで契約を待っててもらいたい。
融資担当者には「いつまでに物件契約したい」という話をし、不動産担当者には、融資の進捗状況を共有するしかありません。
お金と物件を提供してくれるパートナーは決して敵ではありません。だからこそ、しっかりとコミュニケーションを取ることをお勧めします。
サロン引渡しからオープンまでの期間
内装工事が完成しサロンがオーナーに引き渡されます。これを引渡しと言います。そこから営業の準備をしていきます。
これまで数多くの開業を支援してきましたが、オーナーが一番忙しくなるのはこの時期です。
いよいよオープンに向けて必要なモノを揃えていく段階ですが、しっかり計画したつもりでも、やってみてはじめて足りないモノが見えてきます。
注文を忘れただけでなく、欠品して手に入らない、思ってよりも費用がかかる、ということもあります。
お店のレイアウトにあわせてインテリアなどをそろえたり、細々したモノをそろえたりするのも大変です。
また棚やワゴンなど組み立てにも時間と労力が割かれます。大量に出たごみの処理も同様に面倒です。
このバタバタは、引渡しとオープンまでの期間を短くすればするほど大変です。
引渡しの日に保健所の検査を受けて、すぐにでも営業したいというオーナーもいらっしゃいます。家賃が発生している以上は速やかにオープンしたいのです。
そこで重要になってくるのは内装工事の期間中(約3週間)です。リストを作ってやるべきこと、買うべきものをチェックしていきましょう。
とくにインフラ(電気・ガス・水道)の申込みや、電話回線の契約は大事です。回線は工事に時間がかかるため早め申し込んでおくべきです。
また、ホットペッパーは月末に掲載が開始します。したがってオープン日によっては1ヶ月前から掲載しないと予約ができないということも十分あり得ます。
ぎりぎりまで前のサロンで働く人は、なおさら計画的に準備を進めないと、オープンに間に合わないということになりかねません。
まとめ:時間を有効活用しよう
ビューティガレージでも開業相談では開業の流れについて丁寧にお話しています。しかし、実際には開業準備がスムーズに進んでいくことはありません。
特に、上記の3つの難所は注意が必要です。
物件を見つけてから融資審査に進むためには、内装業者の見積もりとレイアウトを待たなければなりません。
物件申込みから契約に進むためには、融資審査の進捗と不動産(もしくは大家)からの要望を考慮しながら判断しなければなりません。
サロンが出来上がってからオープンするためには、保健所の営業許可を取るだけでなく、営業に必要なものがすべて揃っていることが不可欠になります。
開業のプロセスは自分だけで進めることが難しいため、一緒に取り組んでくれる事業者の動きにも大きく依存します。
それゆえ、パートナー事業者とのコミュニケーションが大事なのです。
『成功の秘訣は協働作業! 開業におけるビジネスパートナーとの付き合い方』
また、開業準備には次のステップに進むのに「待つ」だけの時間が存在します。その待つ時間にこそ自分ができることを進めていきましょう。
- 事業者が見積もりを出してくれる間に、事業計画書を完成させる。
- 融資と物件契約が決まるまで、内装デザインや販促物の制作を進める。
- 内装工事を行っている間に、営業に必要なモノやサービスを揃える。
待っている時間を活用して、開業の難所を乗り越えましょう。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。