融資不要でも必須!美容室開業のための計画書作成法
開業相談を受けていると、自己資金が十分あったり、親族から出資してもらったりして、融資を受けない人もいらっしゃいます。そうした人の中には、融資を受けないため事業計画書を作らないで開業準備を進めるケースがあります。
あるいはマンションサロンや自宅サロンで開業する場合も、事業計画書を作らずとりあえず開業してしまう人も多くいます。
何度かコラムでも書いていますが、事業を行ううえで計画書は必須です。融資を受ける受けないは関係ないです。
銀行に見せるためではないので、形式ばった計画書にする必要がないかもしれませんが、少なくとも資金計画や収支計画は立てるべきです。
参考記事『サロン経営に迷わないために!目標達成の手段としての事業計画書を考えよう。』
事業計画書が必要な理由
事業に失敗しないためにも計画書は作っておくべきです。
いろんな理由がありますが、一番大きいのは、経験上オープンしてまもなく資金繰りに苦しんで相談に来る方が一定数いるからです。
サロンが潰れるのは赤字になるからではありません、現金がなくなるからです。つまりサロンを経営していく諸経費を支払えなくなるから潰れるのです。
多くの開業者は、自分の見込み客がいるため開業に踏み切ります。入ってくるお金は想像しやすいですが、出ていくお金についても考えなければなりません。
資金繰りに困らないためにも、少なくとも資金計画と収支計画はちゃんと立てておきましょう。
ポイントは、資金計画ではどのくらいキャッシュ(現金)をもってオープンできるかを決めること、そして収支計画では経費から損益分岐点を明らかにすることです。
参考記事:『うまくいかないケースに備えよう。開業準備におけるバックアッププランのすすめ』
資金計画で資金繰りをシミュレーション
融資が不要という人はお店を作る費用にばかり目が行きがちですが、実際はお店ができてもオープンするまでに結構なお金が出ていくことになります。
例えば、家賃。オープン前にはテナント契約をして、内装工事などを行うわけですから家賃の支払いは発生していきます。かならずしもオープンして売上がたってから支払が発生するわけではないのです。
さらに開業の準備としてスタッフに仕事をさせると、ただ働きはさせられませんから、彼らへの給与が発生します。
最近多いのはホットペッパー。
オープン前から掲載をして予約をとっていく作戦です。ホットペッパーの掲載は後払いですから、オープン前の掲載費がオープン直前直後に発生することがあります。そうなると売上が十分立つ前に支払が発生します。
また突発的な支払がゼロではありません。内装工事中に建物に不備が見つかって、完成が長引くどころか追加費用がかかる。そうしたことが想定されます。
そして当然ですが、オープンしても予想に反して見込み客が来ないケースも考えられます。収益を安定して出せるまでは、出ていくお金のほうが多くなることにも備えておきましょう。
そうしたサロンを運営していくうえで出ていくお金をどれだけ想定して、現金を準備できるのかを考えましょう。
参考記事:『トラブル発生は当たり前? 事業計画書の資金繰りで困らないための対処法』
参考記事:『サロンのお金を意識するための資金繰りシミュレーション』
収支計画は損益分岐点分析から始める
ビューティガレージでは、この損益分岐点分析を非常に重視しています。コラムでも何度も繰り返し書いてます。
つまり、どの程度の売上を上げれば安定した利益を出せるのかを把握しておくことがとても大切なのです。
たとえ自分の見込み客がいるといって収支計画を怠ると、売上は予想通りになったのに全然儲からないという事態に陥ります。
そもそも現在の収入よりも多く得たいと思っているのに、諸経費がかさんでまったく収入が伸びないケースもよく見かけます。
まして大きなハコで開業する場合や、サロンの売上を自分以外のスタッフに依存している場合には、なおさら欲しい利益を出すために必要な売上目標を明らかにします。
その目標を達成するために必要な客数を集められるのか、スタッフにどこまでの売上目標を求めるのか、そのあたりを確認していく必要があります。
現実と損益分岐点が大きく乖離している場合には、物件や人件費の見直しをするか、黒字転換まで時間がかかるのを見越して運転資金(現金)を多く準備しておかなければなりません。
参考記事:『経費計算からスタート! 損益分岐点を使った売上目標の立て方』
参考記事:『儲かる計画を立てよう!簡単な収支シミュレーションの作り方』
資金計画と収支計画が物件より先
資金計画と収支計画が大事なのはわかっていただけたと思います。ではどのように活用していけばよいのでしょうか。
例えば、希望の物件が見つかったときなど、情報を集めて資金計画、収支計画を作ってみましょう。
この物件だと、設備資金に1300万円かかる。さらに損益分岐点200万円を達成するには、指名客だけでは足りない。だから現金として200万円は確保しておこう。
こうした判断ができるようになります。
その時、自己資金がいくらあって、いくら借入れが必要かもシミュレーションして、借入れが難しそうと判断したら、物件を変えたり、スタッフの人数、給与などを変えていくことになります。
もちろん計画通りには行きませんから、「良さそう」という感覚にしたがって判断をしたくなるでしょう。
だとしても、何となくで決めるよりも、リスクを知ったうえで決める方が、そのあとの対応が変ってきます。
計画とどこがちがったのかがわかれば、対策を打つことができるからです。そして現金が残っていればその対策に投資もできるのです。
まちがっても、何となくよさそうという感覚だけで物件を決めないようにしましょう。いいと思う物件があればなおさら資金計画・収支計画をつくって確かめるようにしてください。
まとめ
事業計画書を作成することは、融資を受けるかどうかに関係なく、非常に重要です。
計画書を作成することで、資金計画や収支計画を立て、資金繰りに困ることなく事業を運営できるようになります。
計画書があることで、収益が安定しない初期段階でも安心して事業を進めることができ、突発的な支出にも対応できます。また、損益分岐点を明確にし、必要な売上目標や客数を把握することで、経営の安定化に繋がります。
事業を成功させるためにも、しっかりとした計画を立ててから開業することが大切です。
ビューティガレージの開業無料相談では、ご要望に応じて事業計画書のアドバイスや損益分岐点の算出などを行っております。
ぜひ気軽にお問合せください。
●文/コンシェルジュ室:安斎
ビューティガレージ コンシェルジュ室
日本最大級のプロ向け美容商材のオンラインショップ&ショールームを運営する株式会社ビューティガレージで、サロンの開業・経営支援のコンサルタント業務を担当。
15年以上のサポート実績と、数多くの開業事例、データに基づいた分析で、年間600件以上の開業に携わっています。
事業計画書の作成からお店のオープンまで、サロンオーナーと二人三脚で開業準備を行う「開業プロデュース」が好評。成功サロンを多数輩出しています。